はじめに
 
こどもの頃から、本を読むのが好きだった。
本の世界は、私を現実から遠ざけてくれる。
目の前のことよりもずっと、遠い未来に憧れて、
本の中では、どんな私にでもなれたし、素直に夢をみることができた。
ドラマティックな日々があると信じていた。

おとなになった私は、
喫茶店のママという仕事についた。
本の世界ではなく、現実世界でみんなの人生を眺めている。
おもしろいな
毎日繰り広げられるお店のドラマは、
おなかを抱えて笑ったり、嗚咽して涙したり、
心のどこかがくすぐられたり、誰かに恋をするように
いつもどきどきさせられっぱなしだ。

インターネットという場所を遠ざけていたけれど、
例えばそこが、一冊の本のように読み進めたくなるものだとすれば。
そこに喫茶店の日常が伝えられたなら。

午前二時
深夜のちいさな決断

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